中学受験の目的 4

昔よく通っていたコーヒー専門店に飾った切り絵です

中学・高校で最も大切なのは勉強です。大学受験のためだけの勉強とは話が違います。この時期は何が将来役に立つか分からないけれど,あれこれ勉強すべきなのです。何かの役に立てようと小さい目標を持つのではなく,手当たり次第に体験し吸収し身につけていくことで,人間的に成長し何らかの道が開けていくのではなないかと思います。大げさな言い方ですが,学問とはそのようなものではないでしょうか。知識欲,学習意欲なくして特に高校での学習を真面目にやることはできません。受験勉強は単に合格するためのものではなく,その後の学習のための訓練だと考えてもよいと思います。

私の教え子で桜蔭から東大に進んだ子がいましたが,彼女は生物がとても苦手で,受験のときには知識の詰め込みが大変でした。しかしなぜか東大の理科2類に進学し,卒業後はある有名な会社のバイオ工学に携わっています。なんで,あんなに生物が嫌いだったのに?と聞いたところ,高校生になったころの生物の授業が楽しくて非常に興味が湧いたそうです。私の生物の授業は苦痛だったのに・・・(>_<)

人はどんな才能を持っているか,簡単にはわかりません。何が好きになるのか,何が得意になるのか,塾の教師にしかなれなかった私が言うのもおかしいですが,中学・高校ではいろいろ勉強して将来の準備をすべきなのです。私立中学にはその点,公立よりも数段すぐれた施設とスタッフがそろっています。

将来どのような職業に就くのか,中学高校時代にはそれはまったく想像もつかないことでしょう。早くから医師や弁護士など国家資格を目指しているケースもありますが,多くの子どもたちは明確な将来像を持ってはいないはずです。どこで何をしたくなるのか,人生はわかりません。でも,中高でいろいろと学んでいればその経験がきっと役に立つはずです。その学習機会は私立の方が公立よりも恵まれていると思います。

私立中学の最大の問題は,塾通いも含め,お金がかかるということです。昔のように,お金のかからない公立中学や公立高校がレベルの高い学習環境を維持できていることが理想的なのですが,ハイレベルの教育を受けるには私立に通うほうが良いのが現状です。ところが経済的理由で私立中学受験をすることができないという家庭も多いと思います。何を目指していたのか分からない「学校群制度」や「ゆとり教育」によって公立中・高のレベルは大きく下がり,中学受験熱は一層加熱しましたが,昔の私のように貧しい家庭では,私立受験などとても無理な話です。いま私立を含め,高校の学費をゼロにする話が進んでいますが,これまた公立高校のレベルを大きく下げることになるでしょう。お金がかからないなら,レベルの高い設備も恵まれている私立高校を目指す家庭が増えるはずだからです。そして私立入試の倍率は上がり受験熱はまた加熱するでしょう。そこでは塾通いによる金銭的負担が必ず発生します。塾の費用までは国は出してくれないでしょう。学費をただにすれば済むと考えているのは安易。ここで政治の話はしたくありませんが,よい政策とは思えません。喜ぶのは塾業界です。一方であちこちの公立高校では定員割れを起こすことが予想されます。学習意欲の薄い生徒集団を前にする先生方のご苦労,公立校衰退・・・なんだか嫌な予感しかないです。政府が目指すべきは,公立校のレベルアップではないかと思うのですが。

「受験校の選び方」「いじめについて」「デジタル教材」などを今後の予定で考えておりましたが、次回からはしばらくの間、単元別の話にしようかなと思います。とりあえず、次回は「割合」を。

バス停横に勝手に植えた菊(^o^)