
過去問対策で重要なことは各教科の出題傾向を知ることですが,それとは別の要素もあります。各教科の難易度のバランスを知ることも非常に重要です。どの教科も同じような難度で着実に得点することが求められるのか,それとも極端に難しい教科があるのかを判断するのです。これから紹介するのは,私が実際に家庭教師をしていたときの話です。
ある女の子が4教科受験の共学校を目標にしていました。大手塾に通っていましたが,そこでの偏差値はいつも4教科総合40台で,算数は毎回と言っていいほど30台でした。志望校の偏差値は55前後なので,このままでは難しいと思い,早めに対策を立てることしました。まず,算数の基礎力を上げるため,彼女の悪いくせを直すことから始めました。「式を書く2」で紹介した女子です。頑張って順調に力をつけていったのですが,算数に力を入れたのには大きな理由がありました。算数の得点力を上げることは勿論ですが,それとは別の問題があったのです。
その学校の過去問を見て私は非常に驚きました。算数は最後にちょっと難しい問題が配置されることもありますが,全体的には偏りのない問題が多く,国語も平均的な問題が並んでいるのですが,理科と社会がとても変わっていたのです。まず理科は,大人が見てもあまりいい気持ちがしないような生物の写真がいくつも載っていて,それらの生態を細かいデータから読み取るような問題でした。私が解いてみても分らない問題もありました。一方の社会もくせ者でした。明治以前の歴史問題は一切出題されず,明治から昭和にかけての日本がいかに非民主的な国であったかを強調するような政治色の強い問題が並んでいるのです。出題者の思想的な偏向が明らかに感じられました。基本的な知識を問う問題がないので,理科も社会も受験生の平均点は相当低いだろうと推察できました。
そこで作戦を考えたのです。理科と社会は捨てようと。一応過去問はやりましたが,その雰囲気を感じ取っておいて,どのあたりの問題で点を取ればよいのかを知るためです。記述問題は必ず少しでも書くように練習はしました。でも,入試対策として何か新たな問題をやるようなことは時間の無駄だと思い,知識学習などをやらないことにしたのです。それぞれ50点満点として,20点が目標でした。受験生の平均点は高くてもそのあたりだと判断したのです。理社では差が付かない。算数で稼げば合格できるかもしれないと思いました。
彼女は,国語は人並みにできていたのでそれは本人に任せ,私は算数の演習に力を入れました。過去問に似せたプリントを毎回作り,70点を目標に訓練したのです。有名な大手塾に通っていたのですが,冬期講習と正月特訓は参加させず,毎日5~6時間私がつきっきりで過去問演習をしました。かなり思い切った作戦でしたが,よく言うことを聞いてくれて,見事に合格してくれました。算数は85点でした。受験者平均を大きく上回ったはずです。母親の話では,塾の担任は彼女の合格をとても驚いていたそうです。受かるはずがないと思っていたのだなと感じたと言っていました。彼女は高校卒業後,浪人したものの医学部に合格し,元気に頑張っています。
ところでその学校の入試問題ですが,理科社会は今年もあいかわらずの形式でした。でも,以前のような極端な内容ではなく,読解力思考力を試す質のよい問題が並んでいました。ちょっと変わったのかも(^o^)

